ブログWeblog

ブログトップ

若王子の生態系

2024.06.25今日の横内事務所

5月下旬、若王子のアトリエにてムネアカオオアリの女王蟻を発見しました。

オオアリはこの時期になると繁殖のため、天気のいい日に合わせて結婚飛行を行います。

雄アリと特別な蜜を与えられた雌アリが空中で交尾し新たな蟻の巣の女王蟻が誕生するのです。

朽木に巣を作るこの蟻は主に森の中でみられますが、女王蟻を目にすることができるのはとても珍しいことです。
池に視線を移すと、モリアオガエルの卵が樹上に吊り下がっています。

森と水がないと生息できないこの蛙は豊かな自然の象徴でもあり、天然記念物に指定されている地域もあります。
産卵生態が特徴的で、水面上にせり出した木の枝や草の上に卵塊を産みつけます。

その様子は、実をつけない樹に突然と生命の果実が実ったかのようです。
卵が揺れると、風の音と共に紅葉の葉ずれの音が聞こえてきます。

アトリエの庭は歳月を重ねた紅葉の大木が多く、葉から落ちる陽光が被膜のように建築を包んでいます。
雨の日、紅葉の緑は深くなり、蛙の鳴き声は勢いを増します。
軒の上までかかる枝葉は、若王子の生態系の豊かさを包括しているかのようです。
樹木にたずさわる生態を持つという意味で、蟻と蛙と私たちは共通しています。

環境はあらゆる事象の総体ともいえ、若王子アトリエの美しさに、多様な生態系と生命への感動が深く関係しているように思えてなりません。




スタッフ 河野