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「建築の旅」45

2023.07.07 建築の旅

こんにちは。

今回は江戸時代の建築を紹介します。

江戸時代は武士の文化が、長く平和な時代を経て庶民の中に浸透し花開いた時代だと言えるのではないでしょうか。
まずは武士の美学の集積と言える城郭建築からです。
まずは姫路城。
   
建築単体としても見事ですが、最も素晴らしいのは石垣による地面の造形と多くの建物が複合する形ではないでしょうか。
   
城内のいたるところにある直角に折れ曲がる動線は敵の侵入を防ぐ目的で作られたものですが、素晴らしい空間と視点の変化をもたらしています。
石垣と白壁と軒裏の対比が見事です。
   
建物と建物のつなぎ方、及びつなぎ目に設けられた入り口のお手本。
   
重厚な門構。
石垣との対比が見事です。
   
みごとな石積み。
武士の精神性は堅牢な石垣に最も表れていると言えるのではないでしょうか。日本の木造の伝統に負けず劣らず素晴らしいのが、石積みではないかと思います。


次は松本城。水に浮かぶ城です。
   



次は江戸時代の民家。
まずは大阪、羽曳野市にある吉村家です。日本で初めて国宝に指定された民家です。
大和棟という茅葺きと瓦葺きが洗練した形で複合した様式です。地域の豪農の館として作られたものですが、城郭建築にもつながる武士の美学を感じさせる見事な建築です。

ファサードのすべての要素に機能があり、それらの構成が合理的で無駄がありません。虚飾が一切なく、まるで近代建築を目にしているようです。

門屋の軒裏です。茅の収まりも見事です。

広い玄関土間です。

黒々とした土間の小屋組。

土間に設けられたおくどさん。
一人でいくつものかまどの火を管理できるように、三日月型になっていますが、その丸みが美しい。



次は京町家です。
新町蛸薬師上ルにある吉田幸次郎氏邸で、厳密には明治期の町家ですが、江戸時代に様式は確立していました。
間口が狭く奥行きが深い敷地で京都の蒸し暑い夏をすごすために、必ず大きさが違う2つの中庭があり、それらの気圧の違いによって風のない日でも家の中に緩やかな空気の流れが生まれるようにできています。
これは座敷の奥にある、広い方の中庭。

これは座敷の夏のしつらえ。
夏は障子を葦戸に変えて、できるだけ太陽光を入れないようにすることで涼しくすごすのだそうです。

これは玄関近くにある小さい方の中庭です。街中の建物ですが、中庭には必ず植物が植えられています。これも夏を涼しく過ごす知恵ですね。

どの部屋もどちらかの中庭に面して作られています。

これは玄関で、右手に「通りにわ」と呼ばれる吹き抜けの土間があり、台所と奥にある庭への通路を兼ねていました。

これが通りにわ。
光が美しい、素晴らしい空間ですね。


 
古い台所ですが、明るくて気持ち良さそうですよね。

中庭のディテール。

玄関土間の石のディテール。
多様性を受け入れる感性と、過去の時間が蓄積している感じが素敵ですよね。

創建当時の京都はこんな感じでした。通り沿いは屋根と軒が揃っていて美しいですね。

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街全体がこんな感じだったんですね。これは祇園新橋の保存地区の街並みです。

京都は戦災をほとんど受けなかったにもかかわらず、どうしてここまで破壊されてしまったのでしょうか。

戦後の多様性と経済を最優先する価値観を受け入れた結果といえばそれまでですが、受け入れ方に歴史都市の美学を継承する意識が乏しいことが問題です。世界的に見れば、この有り様は本当に恥ずかしいことだと思います。
   
  
祇園祭りの時は、どの町家も1階の格子を外し2階の建具も外して、人々を受け入れます。
このような素晴らしい伝統がいつまでも続くことを祈りつつ、建築に励みたいと思います。


ではまた次回お会いしましょう。

(横内)