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「建築の旅」27

2023.02.22 建築の旅

こんにちは。

今回からイタリアンルネサンス建築の旅です。
ボッティチェッリが描いた聖母子像。幼いキリストが柘榴の実を持っていることから、柘榴の聖母と呼ばれている絵画で、絵の具を卵の白身で定着するテンペラという手法で描かれています。

人は笑ったり泣いたりしますが、神のために捧げられたそれまでの芸術においては、感情や快楽の表現は教義に反するものとして避けられていました。
ルネサンスの芸術家の目標は、キリスト教の厳しい戒律の中で抑圧されてきた人間らしさを回復することでした。

この絵でもマリアもキリストもギリギリ笑顔ではありませんが、聖人としてではなく人として描かれています。これは現代では当たり前でも、15世紀のイタリアでは画期的なことでした。

サンドロ ボッティチェッリはルネサンスを代表する画家です。
彼は1464年、19歳の時フィリッポ リッピという当時のフィレンツェでは最も有名な画家のアトリエに弟子入りします。そして3年という短い間に老練なその画家のすべての手法と時代の感性を会得し、若くしてルネサンスを代表する画家へと成長します。天才は吸収するのが早いですよね。


14世紀から15世紀にかけてのフィレンツェは毛織物と金融で栄えます。最も有力な商家だったメディチ家が政治と経済を治め、有能な建築家や芸術家を集めて都市の大改造を行います。
まずは街そのものを見てみましょう。
フィレンツェに限らず、ヨーロッパの歴史都市は上から見ても美しいですね。新しい建物もありますが、建物の形や素材やディテールまでもが厳密に法律で決められています。
建物は個人の財産であっても、多くの人の目に触れる以上自分勝手は許されず、公共物だという考え方ですね。

40年前のアルノ川とポンテベッキオ。
これは17年前。
川の水も建物の外壁も、随分綺麗になってますね。
40年前。
17年前。

橋の上には両側に宝石やアクセサリーの屋台がびっしり張り付いてます。
夜は盗まれないように、閉じられるようになっています。
表通りはこんな感じ。街の骨格は中世に出来たので、街路がうねっていて見通しが効かないのが素敵です。
市役所の塔があるシニョリーア広場周辺の街路です。
少し脇道に入るとこんな感じです。
食料品店。
ピザ屋さん。
何百年も前の建物を今でもきっちりリノベーションして使い続けているのが素敵ですよね。法律で保護されているのもあるでしょうが、イタリアは相続税が6%と低く抑えられているから残しやすい、というのもあるように思います。
それと比べて、日本の相続税の高さ、なんとかなりませんかねぇ。今のままでは質の高い建築が残りません。
ディテール、カッコ良すぎでしょう。
街のテクスチャー、いろいろ。
「やっぱり、石はいいねぇ。」と、最晩年の前川國男は言っていました。全くその通りです。


次回はルネサンス建築を見て回ります。
お楽しみに!

(横内)