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「建築の旅」26

2023.02.17 建築の旅

今回はイタリア中部、トスカーナ地方の中世都市、シエナを訪れます。
フィレンツェはもちろん華やかで素敵ですが、わたしは少し素朴な雰囲気のシエナがとても好きです。
シエナはいくつかの丘にまたがる形で街ができているため、起伏に富み、視点の変化があるところに魅力があります。
また、街全体が淡い煉瓦色で、窓についている鎧戸が全て深緑色で塗られいるのが素敵です。
シエナといえばなんといってもカンポ広場ですね。
これは40年前の冬の写真。
これは17年前の夏の写真。
夏なので露天のカフェが出ていますが、その他はほとんど変わっていません。
カンポ広場では、毎年7月と8月の2回、パーリオという競馬が行われます。シエナ市内の地区対抗競馬で、12世紀からの古い歴史があります。
その時は広場の外周道路に土を敷き詰め、そこを10頭ほどの馬が猛スピードで周回します。観衆はその内側にぎっしりと集まって観戦するのですが、広場がゆるいすり鉢型をしているので、どこからでもよく見えるようになってるんですね。
広場の幅と周辺建物の高さの比率は1:4くらいで、いまでも広場の計画のお手本とされています。
広場の床は煉瓦のヘリンボーンでした。


少し裏道に入ると洗濯物が干してあったりして、面白いですね。
至る所にトンネルのような抜け道があります。明暗の対比が美しいですね。
これは泊まった古いホテルの窓周りのディテールです。
外から、開口部保護用の外開きガラリ戸、採光通風用の内開きガラス戸、遮光防寒用の内開きの板戸がワンセットになっていて、開口部に要求されるすべての機能を備えた完璧な収まりでした。(虫の多い日本では網戸がいるかもしれませんが...)
おそらく長い歴史の中で改良を重ねながら完成した標準ディテールなのだと思います。


最後にシエナ大聖堂を訪れます。
オルビエートの大聖堂とほぼ同じ時期、12世紀から14世紀にかけて作られたイタリアンゴシックの代表作です。
享楽的な古代ローマ文明が5世紀に滅亡した後、ヨーロッパは900年近くキリスト教が支配する禁欲的な中世という「暗黒の時代」をすごします。

しかし14世紀頃になるとコペルニクスが地動説を発表するなど、科学的探究の姿勢に目覚め、キリスト教の教えに揺らぎが生じ始めます。
それと同時に、長い間土の中に埋もれていた古代ローマの遺跡が各地で発掘され、研究が進み、イタリア人は自分達の祖先がかつて壮大な文明と豊かで高度な文化を有していたことを知ることになります。

そしてその時代への復興と、人としてのアイデンティティの獲得を目指し、イタリアはうねりをあげてルネサンスの時代にはいっていきます。

では次回はルネサンスの華の都、フィレンツェを訪れます。

お楽しみに。(横内)